Nordic Arctic Day(北極圏のビジネスデー):イベントレポート

デンマーク[あ須1] (#_msocom_1) 、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧5か国による共同出展で注目を集める北欧パビリオンは、大阪・関西万博の閉幕を目前に控えた11日(土)にパビリオン最後のイベントとなる「Nordic Arctic Day(北極圏のビジネスデー)」を開催しました。
北欧パビリオンは、日本と北欧をつなぐ架け橋として、閉幕までの半年間にわたり、王室や大統領、閣僚級をはじめとするハイレベルなゲストを迎えた国際イベントをはじめ、200件を超える企業イベントを実施しました。来場者数は延べ160万人以上に達し、多くの対話と新たなプロジェクトの芽を育んできた半年間の活動を締めくくる、フィナーレにふさわしい1日となりました。
■7年ぶりの来日となるヴィクトリア皇太子殿下
前日に引き続き、スウェーデンのヴィクトリア皇太子殿下もイベントのご臨席されました。ヴィクトリア皇太子殿下は、環境・気候・海洋保全などの分野に長年強い関心を持ち、国際的な活動を続けてきました。2016〜2019年には国連の「SDGs推進の17名のアドボケイト」の一人に任命され、現在も「Global Goals Advocate Emerita」として活動を継続しています。さらに、国連パビリオン訪問当日の10月10日には、UNDP親善大使の延長が発表されました。
特に海洋資源の保全と持続可能な漁業(水産)はヴィクトリア皇太子殿下の関心が深いテーマであり、北欧諸国と同様に長い海岸線を持つ日本との連携に強い意義を感じていらっしゃいます。こうした背景から、今回の訪問でも特にSDGs「海の豊かさを守ろう(目標14)」を軸に若者と対話し、持続可能な未来への意識を共有しました。
Nordic Arctic Day 北極圏のビジネスデー。北極圏を舞台にした国際連携の最前線
北欧5か国共催によるジョイント・ノルディック・イベントの最終回として、北極圏をめぐる地政学・気候変動・デジタル化といったテーマで北欧と日本の閣僚、研究者、企業が国際的な議論を重ねました。
スウェーデンのヴィクトリア皇太子殿下はスピーチの中で、「創造性、協力、そしてコミットメント——これが北欧の価値観です」と述べ、スウェーデンと日本が持続可能性とグリーントランジションを推進するために築いてきた連携の歩みを振り返りました。さらに、地球規模の気候や生態系にとって極めて重要な北極の現状に触れ、「北極は私たち全員をつなぎ、協力して行動することを私たちに呼びかけています」と強調。北欧と日本の協力を通じて、北極圏を未来の世代にとっても命とインスピレーションの源であり続ける地域にしていく決意を示されました。
続いて、フィンランドのアンデシュ・アドレクルッツ教育大臣が開会の挨拶を行いました。同大臣は、北欧と日本の長年の協力関係に触れたうえで、今回の大阪・関西万博の北欧パビリオンは、この関係をさらに発展させる理想的な場です」と述べました。
また、北極が戦略的にも気候的にも国際社会の安全保障の焦点となっている現状を指摘し、サイバーセキュリティやレジリエンス(回復力)、若者政策などを含む包括的安全保障の観点から、北欧地域が連携して課題に取り組んでいることを紹介。北欧閣僚理事会が進める北極圏の研究・協力の枠組みや、臨界点への備えに向けた国際的議論の重要性を強調しました。
午前の地政学セッションでは、安全保障や緊急対応を含む北極圏の国際秩序の変化が議論され、午後の気候変動・極地研究セッションでは、急速に進む環境変化への対応と、北欧と日本による研究協力の強化が主要なテーマとなりました。続くデジタル化・コネクティビティのセッションでは、北極圏を経由した海底光ファイバーケーブルなどの戦略的インフラ整備に焦点が当たり、テクノロジーと地政学の両面から議論が深まりました。
北極圏は、欧州とアジアを最短距離で結ぶ新たな物流・通信ルートとして注目されており、エネルギー、海運、デジタル通信、環境研究など多岐にわたる分野で、日本にとっても新たなビジネス機会を広げる可能性を秘めています。近年の気候変動により航路開発やインフラ整備が進む中、北欧諸国は長年にわたる知見と技術を有しており、日本にとっては北欧との連携が北極圏進出のカギとなります。
登壇者には、スウェーデンのエリック・スロットネル民生大臣 、北欧閣僚理事会 事務総長のカレン・エレマン氏、北欧および日本の極地研究者やデジタル政策関係者など、多彩な顔ぶれが揃い、政策・科学・ビジネスが交わるハイレベルな国際プラットフォームとなりました。終日のプログラムを通じて、北欧と日本が協力しながら北極圏の未来を形づくるための多角的な可能性が示され、今後の国際連携に向けた重要な一歩となりました。