ジェンダー平等デー:イベントレポート

ジェンダー平等デー:イベントレポート
2025年9月1日、大阪・関西万博の北欧パビリオンにて「ジェンダー平等デー」が開催されました。本イベントは北欧5か国が共同で企画する「Joint Nordic Event」シリーズの一環として行われ、北欧と日本の政策担当者、研究者、企業代表などが集い、少子化や人口減少といった共通課題に関連して、ジェンダー平等が持続可能な成長にどのように寄与できるのかを多角的に議論しました。
戦略としてのジェンダー平等
基調講演に登壇した北欧閣僚理事会の イダ・ヘイマン・ラーセン事務総長補佐 は、北欧諸国が50年以上にわたり共有してきたビジョンを振り返り、「ジェンダー平等は道義的な課題にとどまらず、社会と経済を強くする戦略」と強調しました。
ラーセン氏は、共有型の育児休暇制度や質の高い保育サービスが、女性と男性の双方に家庭と職場で役割を担う機会をもたらし、結果としてイノベーションや経済成長を後押ししてきたと紹介。さらに「多様性はイノベーションの源泉」であり、性別の多様なチームはより生産的で問題解決能力が高いというデータを示しました。
また、ジェンダー平等の達成には「単一の解決策はなく、継続的かつ学際的な努力が必要」と語り、近年世界的に見られる平等推進への“プッシュバック”に対し、北欧諸国は「決して後退せず、さらに前進する」との姿勢を明らかにしました。
歴史が示す「継続すること」の価値
特に印象的だったのは、パネリストとして登壇したアイスランドの作家イルサ・シグルザルドッティル氏の言葉です。「16年連続でジェンダー平等世界1位を維持していることは誇らしいこと。しかし大切なのは成果を守り続け、改善を重ねることだ」と語り、参加者の共感を呼びました。
背景には、1975年にアイスランドで起きた「女性の休日(Women’s Day Off)」があります。この日、全国の女性の9割が仕事も家事も休み、街頭に立ちました。そのインパクトは社会全体に広がり、女性の権利や平等に関する制度改革を加速させたといわれています。この歴史的な出来事は、ジェンダー平等が一度の達成ではなく「継続する文化」によって支えられてきたことを象徴しています。
パネルディスカッションでの議論
午前のパネルでは「ステレオタイプとメディア」が議題となり、広告や報道における固定的な性別役割が若者の進路選択や自己認識に与える影響が議論されました。北欧で進められているメディアリテラシー教育や、ジェンダーに偏らない描写を促す規制の取り組みが紹介されました。
午後には、金融や技術など男性比率の高い分野での女性参画、リーダーシップ促進、ワークライフバランスを支える企業文化や柔軟な勤務制度が議論されました。IKEAや積水ハウスの具体的事例は、ジェンダー平等が企業の競争力や人材定着に直結することを示しました。
幸福度とイノベーションのつながり
議論を通じて、「自己決定感が幸福度を高める要因」「多様性が社会のイノベーションを生む」という視点が繰り返し示されました。北欧の実践は、日本における少子化や高齢化といった課題に対しても、大きな示唆を与えるものとなりました。
共通課題に挑む北欧と日本
クロージングでは、駐日デンマーク大使ヤール・フリース=マスン氏が「北欧と日本は共通の課題を共有している。ジェンダー平等は社会の持続性と経済成長の基盤となる」と締めくくりました。
「ジェンダー平等デー」は、北欧諸国の経験と日本の現状を重ね合わせ、未来を共に描く場となりました。強調されたのは、「成果を守り続ける努力」「多様性がもたらす力」そして「ジェンダー平等が幸福とイノベーションの土台である」という普遍的なメッセージでした。