Celebration of Sauna Life:イベントレポート

Sauna

大阪・関西万博の閉幕を目前に控えたこの週末、「Celebration of Sauna Life」 が開催されました。


本イベントは、フィンランドが主催する最後の公式プログラムであり、両国の文化交流を象徴するテーマとして 「サウナ」 に焦点を当てた特別な一日となりました。「Celebration of Sauna Life」は、サウナを単なる入浴文化としてではなく、心身のウェルビーイングや社会との関わりを再考する場として位置づけたカンファレンスです。


サウナ文化の研究者、ウェルビーイング分野の専門家、サウナ施設の実践者など、多様な分野から登壇者が集まり、トークセッション、ディスカッション、体験プログラムが行われました。

登壇者たちはまず、サウナの本質的な役割や社会的価値についてディスカッションを展開。フィンランドにおけるサウナは、身体を温めるだけでなく、心のリセットや対話の場として長い歴史を持ちます。一方、日本でも近年、サウナが「ととのう」という言葉とともにブームとなり、より深い心身の整え方として注目を集めています。

両国に共通するのは、自然との共生、そして心と身体の調和を大切にする価値観です。登壇者からは、これらの共通点を活かしながら、都市生活の中で心身を整える場としてのサウナの可能性を広げていくべきだという声が多く上がりました。

会場は終始、穏やかな空気感と熱気が混ざり合い、まさに“サウナ的”とも言える独特の雰囲気に包まれていました。

日本とフィンランド、文化を通じた対話と交流

本イベントでは、トークやセッションを通じて、サウナをきっかけとした 日本とフィンランドの文化的な対話が活発に行われました。
フィンランドからは伝統的なサウナ文化の背景や哲学が紹介され、日本側からは現代社会のなかでサウナが果たす新たな役割や、地域コミュニティとの結びつきについての事例が共有されました。

また、質疑応答の時間には来場者からも多くの質問が寄せられ、国境を越えた意見交換が自然と生まれる場面も。サウナという共通の文化体験を介して、互いの国の価値観やライフスタイルへの理解が深まっていく様子が印象的でした。

特別プログラム:能の上演

イベントの後半では、サウナをテーマとしたカンファレンスの中に、ひときわ印象的なプログラムが用意されていました。それが、日本の伝統芸能「能」とのコラボレーション企画です。

シテには能楽師・塩津圭介さんが登場し、舞囃子「高砂」と「羽衣」が演じられました。静と動、光と影が交錯するような舞が繰り広げられると、会場全体が一瞬で凛とした空気に包まれ、多くの来場者が息をのんで鑑賞していました。なかには能を初めて観るという来場者も多く、文化的にも貴重な体験の場となりました。

上演後のトークセッションでは、塩津さんが次のように語りました。

「能の感じ方には正解がなく、観る人それぞれが自分の内側と対話する時間になる。」

さらに、能とサウナの間にある共通点についても言及し、

「能もサウナも、静寂の中で自分と向き合い、何かを“受け取る”というより、自分の内側にあるものを感じ取る体験」
と語った言葉が、多くの参加者の心に深く残りました。

伝統芸能と現代のウェルビーイング文化が交錯し、新たな意味が生まれるこのプログラムは、イベント全体の大きなハイライトとなりました。

文化の交差点としての「サウナ」

「Celebration of Sauna Life」は、サウナという文化的共通項を通じて、日本とフィンランドの価値観や思想が交わり、新しい視点が生まれる貴重な機会となりました。両国が共有する“自然とともに生きる”という価値観を起点に、身体的・精神的なウェルビーイングを再考するこのイベントは、今後の国際的な文化交流やまちづくりのヒントにもなり得る内容でした。

サウナが単なるブームではなく、人と人、文化と文化をつなぐ媒介として発展していく――そんな未来への可能性を感じさせる一日となりました。